6つのテクニックで「決められる」会議に変えよう

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私が事務局(司会、議題や会議資料の調整)を引き継ぐことになった会議は、ダメな会議の典型と言える状況でした。

  • 出席者が20人程度と多いが、発言者は数人に限定されている
  • 何かを決めたい場合でも、「声の大きい人」に議題そのものを変えられてしまい、議論がしきれず決められない
  • 議論がズレていったときに司会が修正しようとしても反発があり、修正に時間がかかる
  • そうこうしているうちに、当初考えていた議題を議論できる時間が少なくなり、会議終了時に「議論を尽くして決めることができた」という納得感が出席者の中で少ない
  • 司会と出席者の関係も悪くなる

司会の私は一般職で、一方で出席者のほとんどが管理職という力関係もあり、私が会議をコントロールできていない状態でした。議論が発散してたり荒れても、それは「声の大きい人」のせいと考えて、半ば諦め気味でした。

とはいえ、20人近くの管理職を拘束する会議は間違いなく高コストで、思うように会議が進まない責任は私にあります。逆に、司会の私がやり方を変えれば、うまく会議をコントロールできるようになるはずです。

会議のやり方、ファシリテートを勉強しようと、Amazonで会議の本を検索し、最も評価が高かった『世界で一番やさしい会議の教科書』を買いました。 

世界で一番やさしい会議の教科書

世界で一番やさしい会議の教科書

 

休日を利用して読み切り、会議の日は早朝から出社し、本で学んだことを準備して会議に挑みました。結果は、 思った以上にすんなり会議が進む進む。前回までとは違って、議論の流れを私がほぼコントロールすることができました。

この本で学んだテクニックの中でも効果のあったものを、私が独自で工夫したことを交えて紹介します。

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1. 会議のはじめに、会議の目的(終了条件)が問題ないかを出席者に確認する

その日の会議に目的を設定することが重要だとは様々なところで言われていますが、事前に私が考えた目的で問題ないかを明確に出席者に確認したことはありませんでした。「今日の会議ではこれを目的にしたいと思います」と伝えているだけでした。

これを、「今日の会議ではこのような状態になったら終了としたいと考えていますが、いかがですか?ここでズレがあると議論がまとまらないので、まずはこれに関して違和感がないか確認をお願いします。問題ありませんか?」としつこく尋ねました。ここでしっかり確認することで、私が事前に考えた目的は、出席者が認めた目的になるわけです。会議途中で「目的に違和感がある」と言い出すとちゃぶ台返しになるため、出席者は真剣に考えてくれるはずです。始めに一致しておくと、議論が発散した際に元の議題に誘導しやすくなります。

ポイント
  • 目的は事前に考えて、あらかじめ記入しておきます。
  • 「目的」と書くと大げさに感じるため、会議の「終了条件」とするとすんなり入りやすいです。終了条件は「(誰が)どのようになった状態」と決めると、わかりやすいです(例えば、「今月のクレームに対して担当者と対応期限が決まった状態」)
  • 会議開始時に終了条件が問題ないかを出席者にしっかり確認します。

2. 投影したGoogleドキュメントにスクライブする

世界で一番やさしい会議の教科書では、ホワイトボードに議論内容を書いていく(=スクライブする)ことを紹介されています。

スクライブの利点について、本では

議論が"見える"ようになる。
見えるだけで劇的に議論が楽になる。

と紹介されていますが、私の言葉にすると「迷子に気づきやすくなる」ことが大きな利点だと思います。発言していることが見える形で簡潔に記入されるため、発言者もそれ以外の人も論点がズレていないか、違う論点を提起しているのか、わかりやすくなります。論点をズラすつもりはなくてもズレていってしまう=迷子を、発言者自身で気づいてもらえます。

スクライブをイメージしてもらうために、上の方に例を載せています。この記事を想定しつつ書いたものですが、フォーマットの参考程度に見ていただければと思います。

本ではホワイトボードにスクライブすることを紹介されていますが、画像のようにGoogleドキュメントにスクライブしてそれをプロジェクターで投影する方が楽だと思います。書くより打つ方が早いですし、誰もが読みやすく調整できますし、スクライブしたものが議事メモになります。Wordでも良いですが、Googleドキュメントを共有すれば出席者が手元でも見ることができます。

ポイント
  • 会議が始まるまでに、終了条件と議題(上の例だと1~5)をあらかじめGoogleドキュメントに書いて共有しておきます。議題の横には目標所要時間を書いておく方が良いです。
  • 会議が始まったら、司会をしつつ、議題の下に議論内容を箇条書きで書いていきます。私は「問)」「意見)」「結)」を記号として使っていて、「問)」や「意見)」にはそれに対応する「結)」が漏れなくあるように確認をします。「発散しつつありますが、ここはどのような結論になりましたか」と聞くだけで、まとめて教えてくれるものです。
  • 「結)」のうちアクションアイテムは赤字にしておきます。会議のまとめのパートで、すぐにアクションアイテムを見返せます。

3. 自分個人は反対と思う意見が出たとしても、「問)」や「意見)」として書いて、出席者にそれに対する意見を募る

これまで、私は自分が反対だと感じる意見が出たら、自分が考えている方向になんとか持って行こうとコントロールしようとしていました。でも、司会という発言しやすい立場を利用してそれをすると、当然最初の発言者は反発を覚えますよね。よくないやり方でした。

スクライブをすると、自分が賛成だろうと反対だろうと、とにかくまずは簡潔に書く作業が生じます。客観的に書いた後に、「(自分が反対だと思う理由)の観点でも考えてみる必要があるかと思いますが、いかがでしょうか?」と問いかけるだけで、十分だと気付きました。自分自身で意見を表明しなくても、考える観点を問いかけるだけで出席者が考えて意見を言ってくれます。自分自身は中立的立場を保ち続けられ、雰囲気が悪くなることもありません。たとえ自分の思っていた方向に行かなくても、自分の懸念が議論された上での結論なら、納得できます。

4. 常に笑顔で

会議のテクニックというよりも社会人としてのマナーですが、常に笑顔で感じよく対応します。 まずは自分が出席者から好かれる(少なくとも嫌われない)ことが円滑な会議の第一歩です。感じよく対応していれば、スクライブしきれなかったときにも待ってくれたり、助けてくれます。

私はどちらかというとこれが苦手で、会議中はかなり意識して笑顔を作るようにしています。

5. キーマンには会議前には「今日はよろしくお願いします」、会議後には「今日はありがとうございました」と挨拶しておく

人は重要な人物として扱われると悪い気持ちはしないものです。会議前後でキーマンに挨拶しておくと、会議中に仕切り方を失敗してムッとされることがあっても、その後に響きにくくなるはずです。自分の方が知識や経験が劣ることが多いわけですから、苦手な人でもちょっとした挨拶で関係をしっかり作っておくと、会議以外の場面でも役に立ちます。逆に会議で人間関係が悪くなると、会議以外の場面で苦労することになるため、「4. 常に笑顔で」と合わせて社会人必須のテクニックです。

6. 発言していない人には名指しで当てる

会議が進んでくると、発言していない人が出てくるはずです。出席している人は部門の代表のような、会議で決定したことを部門に持ち帰って落とし込み、確実に遂行してもらう必要がある人のはずです。もやもやした状態で持ち帰ってもらって「自分はあんまり納得していないんだけど」ということは避けなければなりません。

このため、会議中盤で発言していない人は名前を呼んで当てて、意見がないか聞きます。このときに「まだ発言していない方、意見はありませんか」という聞き方だと発言してくれるとは限りません。発言内容がまとまってなくて意見を言いにくい人でも、名指しされればその旨を教えてくれます。

全体の納得感を醸成する上でも、名指しは重要です。自信を持って指名できるように、私は会議開始時に出席者の確認をする際に名前を呼ぶようにしています。

さいごに

世界で一番やさしい会議の教科書から、会議をファイシリテートするテクニックの一部を紹介しましたが、本では他にも多くの実践的なテクニックが載っています。私のようにうまく会議運営が思いどおりにいかない方には、ぜひ読んでいただきたい本です!